スターバックスに学ぶ!ストーリーで考える事業戦略とは?

事業戦略を「ストーリーで考える」という視点を手に入れました。
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ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
今までも、ランチェスター戦略であるとか、孫子であるとか、戦略の型を学ぶことはありました。しかし、「ストーリーで考える」というのは1つ上の次元で戦略を考えることで、戦略の厚みが格段に増す視点であると感じています。

スターバックスのストーリー

この本には10社くらいの戦略のストーリーが紹介されています。その中から、なんとなく身近なスターバックスの事例を取り上げて考えてみます。
著者によると、スターバックスの戦略はこうなっています。
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ストーリーなので、何かの一面を切り出したようなものではない、というのがポイントです。
構成要素が因果関係で結ばれていて、その結果としてゴールである利益へと繋がるストーリーとなっています。

競争優位によって長期的な利益を生み出す

事業のストーリーを描くにあたって、最後はもちろん「めでたしめでたし」で終わるべきです。
営利企業の戦略のストーリーのゴールは利益です。もっというと、長期的に持続可能な利益です。したがって、ストーリーの最後は、必ず「長期的な利益」で締めます。
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あとは、このゴールを導くようなストーリーを組み立てていくという考え方です。
この長期的な利益というゴールにたどり着くためには、「競争優位」を得る必要があります。なぜなら競合に対して優位性のない状態では利益は出ないからです。
競争優位を得る方法は2種類あります。

  • 価値を増大させる
  • コストを低減させる

スターバックスは、低コスト戦略ではなく、価値増大戦略なので、これが競争優位となります。

構成要素を因果関係で結ぶ

こうやって逆算しながら、ゴールの「長期的な利益」にたどり着くストーリーを組み立てるわけです。
ここから更に逆算して「価値の増大」という競争優位を得るために、パスをつないでいきます。
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これが構成要素です。スターバックスが他のコーヒーショップに対して高い価値を持っているのは、店舗の雰囲気だったり、スタッフの接客だったりします。
こうして構成要素が決まれば、あとはそれに従って個別の意思決定をしていくだけとなります。
ここで、構成要素を選択する際に重要なのは、それぞれの構成要素が強い因果関係で結ばれていることです。「こういう構成要素があったら、たぶん価値は増大するだろう」というような弱い因果関係ではだめです。

賢者の盲点となるキラーパスを組み込む

ここで、戦略の独自性を生む最も重要な構成要素を定義します。
これをキラーパスと呼んでいますが、スターバックスの場合は「直営方式」がキラーパスとなっています。
キラーパスも構成要素のひとつなので、ストーリーの因果論理の中に組み込まれています。
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ストーリーを構成する上で、このキラーパスをどう選択するかが重要です。
逆説的ですが、キラーパスは「合理的でない」ものを選択するのが良いです。もう少し丁寧に言うと、「それだけを見ると合理的ではないが、全体としてみると合理的で重要」となるように選択します。これが「賢者の盲点」です。
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部分で見ても全体で見ても合理的なのは、「普通の賢者」です。これはすぐに真似されて競争優位を失ってしまいます。

競合を自滅の論理に追い込む

優れた事業戦略で成功を収めると、遅かれ早かれ競合他社は真似をしようとします。その際に戦略のストーリー全体を正確に真似をするのは困難なため、明らかに成功の要因となっている一部を切り出して真似をしようとします。
この時、構成要素の一つが「合理的でないもの」であると、競合他社は積極的にこの構成要素を真似しようとはしません。たとえばスターバックスの場合は「直営方式」という構成要素を持っていますが、これは店舗網を拡大するうえでは合理的ではない選択です。
そこで、スターバックスの戦略を真似しようとする競合他社は、事業展開の合理性を考えて「フランチャイズ方式」を選択するかもしれません。しかし、この「直営方式」という構成要素は全体で見ると、とても重要な構成要素となっているので、これを真似しないことには全体としてストーリーが成立しないのです。
「フランチャイズ方式」は確かに部分的に見れば合理的なのですが、スターバックスのストーリーの全体を見ると、店舗の雰囲気やスタッフの品質を保つことができず、ストーリー全体を崩してしまいます。
このように部分的に見ると合理的でない構成要素を組み込むことによって、競合からはストーリー全体を真似することが難しくなり、一部だけを真似する競合は自滅していきます。これが「自滅の論理」です。

その他の戦略について

個別の戦略の型に関して書いたブログもあります。
戦わずして勝つ?孫子の兵法とは。
有名な戦略を一気に知りたい人におすすめの「戦略の教室」
ランチェスター戦略に学ぶ、弱小ベンチャーの勝ち方の論理

コメント

  1. […] 「スターバックスに学ぶ!ストーリーで考える事業戦略とは?」で紹介したこちらの本でも同じようなことに触れていました。 […]

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