管理工学科の教授の授業です。
数学の使い道としては、最も日常生活に近い部類じゃないかな。
「都市モデル読本」
序章 都市の数理モデルと研究のエートス
これまでに読んだ本の中で、最も日本語が理解できない本でした。
もう、章の題を読んだ時点で悟りましたが。
要素還元主義、具象的で造形的な対象、などなど正直よくわからない言葉が多発。
1章 ヴェーバー問題と模型解放
市民ホールのような公共施設をどこに配置したら良いか。
住民の移動距離の「総和」を「最小」にする問題、つまりミニサム問題。
・・・の2次元の平面バージョン。
総和を最小にするというのは、社会全体として最も効率が良い方法。
2章 1次元都市と2次元格子状都市のヴェーバー問題
今度は1次元バージョンと格子状バージョン。
1次元という条件は現実的でないようで、良く考えてみると良くあったりする。
実家の付近はただ1本の道路にそってほぼ1次元に家が並んでいて。
それ以外の場所にはほとんど家がない。
もっと大きく考えると鉄道の沿線に家が並びがちであったり、日本自体が1次元的ということも。
1次元のヴェーバー問題で面白いのは、解が中央値になるということ。
たとえば、東京、品川、新横浜、名古屋、京都の5つの駅を考えます。
それぞれの駅に一人ずつ住んでいるとします。
どこに施設を配置すべきか!
なんとなく、新横浜と名古屋の間のどこか、静岡あたりかな。
・・・と思いがちですが、応えは新横浜の駅その場所がミニサムの解なのです。
格子状というのは、札幌とか京都とかマンハッタンのような都市。
これは、1次元を2方向に考えるだけ。
つまり、南北方向の中央値と、東西方向の中央値・・・の位置が答えです。
3章 複数施設のミニサム型配置モデルとミニマックス型配置モデル
さっきの話、新横浜に施設を配置するのは、ミニサムの解。
すでに書いたとおり、これは社会全体として最も効率が良い。
けど、京都さんから新横浜はあまりに遠くないか・・・。
そこで、住民の移動距離の「最大値」を「最小」にする問題を考えます。
これがミニマックス問題。
ここまでは1つの施設で考えていたから話が簡単でした。
でも、2つとか3つとかを考えると、急に複雑になります。
なぜかといえば、施設が1つなら全員がその施設に行くと確定しています。
でも、2つになると誰がどちらの施設に行くという「割り当て」を考えなきゃいけないのです。
その割り当てで登場するのがボロノイ図というやつです。
ルールは簡単で住民は一番近くの施設に割り当てられるというものです。
4章 連絡通路と距離分布の作法
この授業の先生は、サークルの先輩の所属していた研究室の先生です。
で、ちょうど2年前に、渡り廊下を何階につくるかみたいなことを聞きました。
そして、その話がこの章から始まります。
それなりに複雑な計算なので内容は省略。
5章 奥平のエレベータ 断面積モデル
奥平って何かと思えば、奥平さんでした。
高層ビルが乱立してますが、エレベータのないビルはないでしょう。
エレベータは多ければ多いほどストレスなく人を運んでくれます。
でも、多ければ多いほど人が活動するスペースが減ってしまう。
この本の計算によれば、1000階建のビルの1階の63%がエレベータに割かれる。
6章 人口成長の微分方程式モデル
何年に世界の人口が何億人になるとかいいます。
それに対してこの本は6通りの計算法を示しています。
線形成長、指数的成長曲線、ゴンペルツ曲線。
定数項つき指数曲線、定数項つきゴンペルツ曲線、ロジスティック成長曲線。
未来の予想は一つの計算だけでは不十分。
10年後の世界人口は90億人かもしれないし、70億人かもしれない。
それは計算方法による。
7章 人口動態のコーホート要因モデル
コーホートは古代ローマの歩兵隊を10に分けた1隊のことだそうです。
だいたい500人くらいで構成されていたらしい。
同じように、日本の人を男女や年齢でグループ分けします。
そして、その変化を予測する。
得られるのは、人口ピラミッドの予想です。
8章 人口分布の経験式
都市の人口分布がどんな風になっているか。
一点を中心に円形に分布しているとして定式化しています。
Clarkの式、Sherratt-Tannerの式、Newlingの式。
9章 道路パターンと距離分布の理論
モンゴルと、京都と、日吉。
それぞれ、ある場所からある場所に移動するとき、どのくらいの距離が必要か。
モンゴルは何もない2次元。(自分のイメージです)
京都は格子状都市。
日吉は放射状、環状。
何もない場合が一番移動距離が短いのは当たり前ですが、それでは生活する場所がない。
これはエレベータと一緒。
住んでるだけに経験的にわかりますが、放射状の都市は移動距離が大きいです。
でも、これが長距離になると格子状都市の方が移動距離が大きくなる。
コメント